最近は昔の作品を上映してくれる名画座的映画館も少なくなり、さらには一昔前のようにテレビの深夜放送や昼の映画劇場で20年以上前の作品を放映してくれるような事は全く無くなってしまったようです。その上にテレビのカラー放送というニーズに応えられない白黒作品はよほどの名作で無い限りお目にかかることは無くなってしまったと嘆いておりました。
しかし世の中は捨てる神有れば拾う神ありきでDVDなる映像素材が全盛を極めるようになり、色々なメーカーが巷の映画館などでは絶対に見る事が出来なくなったような古い作品を次々に発表してくれるようになり旧作マニアにとっては嬉しい限りとなりました。
今回発売された「激戦地」「北極星」「砂丘の敵」は一般映画マニアからみたら一見マイナーな作品とも見られがちですが、戦争映画ファンにとっては貴重な作品群と考えられるでしょう。
「激戦地」は第二次大戦終戦直後から数多く米国で作られた戦史物のはしりの一つで「西部戦線異状なし」のルイス・マイルストンが制作した作品として有名です。内容は1943年にイタリアのサレルノ湾に上陸した米軍第36師団の無名兵士達の戦いを兵士心理的に描いたものでした。上陸直後に小隊長を失ってしまった歩兵小隊が過酷な戦闘にめげずに最初の目標であります、廃墟となった農家にたどり着くまでの兵士達の心情を描いた内容で、淡々とした展開でド派手な戦闘アクションや登場兵器を期待すると外してしまうのでご注意されたい。アクション映画というよりは、当時の米軍兵士の大半を占めていた民衆達がどのような気持ちで戦闘に従事していったのかというのが主題で「西部戦線異状なし」に相通じる心理的作品と言えましょう。冒頭のシーンでドイツ軍の砲撃で重症を負った兵士の描写に、現在作られているシリアスな戦争映画の血なまぐさいシーンが重なる気がしてしまうのです。
「北極星」は日本の参戦により第二次大戦が激化し、ドイツ軍とロシア軍がスターリングラードで火花を散らしていた1943年に作られた作品であります。当然ロシアでは一般映画など作る余裕もほとんど無かったので、その代わりに当時ロシアに軍事援助などでテコ入れしていた米国がナチスドイツの暴挙を国民に知らしめるべく製作したプロパガンダ映画とも言える作品でした。
モスクワ近郊 にある架空の村の住民が1941年始まったドイツ軍のロシア侵攻に直面するや老若男女が命をかけて力強く対決していくという姿を描いた内容で、史実ではドイツ軍の侵攻時にはあまりこのような事実は無かったとのことですが、あくまでも戦時中の娯楽プロパガンダ作品ということを年頭において見てもらいたい作品なのです。当時としては制作費の掛かった作品と見えて、特撮を駆使して第二次大戦中のドイツ軍戦車や航空機を再現したり、第一次大戦の実物ドイツ軍兵器を多数使用してミリタリーにうるさい人にも楽しめる作品となっています。
ちなみに悪役でありますドイツ軍軍医将校を演じていますのが、1924年にフランスで製作されました第一次大戦時の捕虜収容所での人間性描写を描いた名作「大いなる幻影」でドイツ軍将校を好演したエリッヒ・フォン・シュトロハイムなのであります。戦時中に製作された戦争映画の代表作品の一つとされている物でしょう。
「砂丘の敵」が製作されたのは1941年で同年3月にドイツのロ ンメル・アフリカ軍団が北アフリカに登場するまでの権力闘争の主役は英軍とイタリア軍でした。その為に当作品の内容も熱砂のアフリカ戦線と呼ばれた北アフリカより程遠い英領東アフリカ(現ジブチ・ソマリア方面)の植民地における反乱軍問題を扱ったものでした。比較的平穏な英軍マニエカ駐屯地に原住民の反乱鎮圧のために赴任してきた少佐(ジョージ・サンダース)が直面する兵器密売という問題で、ドイツ軍の兵器を反乱軍に密売している犯人は誰か? というのが本筋です。当時の人気女優でありましたジーン・ティアニーがお色気いっぱいの現地混血美女として登場し、さもすれば地味になりがちなストーリーに紅一点華を咲かせてくれています。
ちなみに日本公開は1952年でした。
コメント:Sam Motojima 氏(戦争映画フリークス)
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